MERCEDES-BENZ SLS AMG メルセデス・ベンツSLS AMG
ともかく曲がる、曲がる。右足がうれしくなる
実は復刻版を意図したものではなく、AMGの基本設計が偶然かつてのSLSに似ていたから…そんな逸話もまた伝説の予感である
■西川 淳の見解
今から3年前のこと。メルセデスAMG初となるオリジナル設計エンジン/ 63ユニットがデビューしたとき、AMGの鼻息も荒いエンジニア氏(ポルシェから移籍した人だった)は、「次はオリジナルスポーツカーを作るぞ!」とほろ酔い気分で語ってくれたものだ。
計画からたった3年で生産にまでこぎ着けた悲願のオリジナルスポーツカー、SLS AMG。ボディ骨格はアルミニウム96%のスペースフレーム構造で、マグナ社製。なんと241kgに収まった。63ユニットはリエンジニアリングされてM159型へと進化。吸排気系に大幅な改良を加えてパワーアップを果たしたほか、ドライサンプ化によって極めて低い位置への搭載を可能とした。実際、ボンネットを開けてみれば、地面にV8エンジンを置いているように見える! しかも見事なまでにフロントミッドだ。組み合わされるのは、トランスアクスル方式の7速DCTトランスミッション。ゲトラグ製のダブルクラッチタイプである。サスは前後ダブルウィッシュボーンで、ダイレクトステアリング付き。オプションでセラミックブレーキディスクも装着可能だ。アッセンブリーは他のAMGモデル同様、ジンデルフィンゲン工場…。
とまあ、スペックや仕様を語りだすと際限がなくなるので、インプレッション報告に移ろう。
60年代後半のアメリカンマッスルV8のようなシャープで乾いた大咆哮があたりに響く。ドア中の取っ手を引くとガルウィングが開いた。走り出すと取っ手は自動で収納される。座ってからドアを閉めるのは難しい。紐もない。乗り込みながら(ドアの下辺で頭を打たないように!)グリップを持ってドアを下げる。室内はタイト。ただし、頭上はくぼんでいるから窮屈さは感じない。ベンツ流のスイッチ類だが、シンプルでレーシーな配置が気分を盛り上げる。
走り出すと、まずノーズの動きの軽やかさに感心。軽快なうえにボディのしなり強さを感じるから、クルマの大きさを意識しない。街乗りからして、スポーツカーだ。扱いやすいがベンツっぽくはない。乗り心地は硬いが収まりのいいもので、アウディR8よりも少しハードか。
新V8は相変わらずフラットトルクだが、フケ上がりのシャープさが違う。高回転域でもよどまない。右足が嬉しくなる。
乗りこなす喜びを感じるハンドリング性能には心底、惚れてしまった。ESPスポーツでもハイレベルに楽しめる。古典的FRスポーツカーの集大成だ。






