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“謎解き”という読書の愉しみ

Hatenaブックマークに追加 この記事をクリップ! 2010/03/02

米光一成

米光一成 Kazunari Yonemitsu
ゲームクリエイター/立命館大学映像学部教授/ライター
1964年生まれ。大学卒業後、ゲーム制作会社コンパイルに入社。『ぷよぷよ』『トレジャーハンター』シリーズなどを手がけ、スティングに移籍後、『BAROQUE』などのゲームを監督。現在ネットワークゲーム・携帯コンテンツ・WEB記事の制作など幅広く活躍中。主な著書に『仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本』(ベストセラーズ)、編著『デジタルの夢でメシを食うためにボクらは!』(マイクロマガジン社)、共著『恋愛ふいんき語り』(ポプラ社)など。
●米光一成公式ブログ「こどものもうそうblog」
http://blog.lv99.com/
●米光ラジオ(平日毎日24時30分~25時・Twitterで開始予告)
https://twitter.com/yonemitsu

現代小説からノンフィクション、海外ミステリー、古典文学……と、米光さんの読書領域は幅広い。興味を惹かれるものに出会うと、関連書籍を10冊まとめて購入する。面白そうなものから読み始め、読んでみてつまらなかったら読むのをやめるという。

「門外漢でも一冊の本を通して読むと、なんとなく全体像がつかめます。その後、“つまらなかった本”を読み返すと印象が変わることがある。文章はわかりづらいけれど、内容は案外面白いぞと気づかされたりもする。つまらないのに無理に最後まで読もうとしない。でも、つまらないからといって切り捨ててしまわないことも大事なんです」

読書を愉しむ上で、必ずしも予備知識は必要ない。しかし、作品が書かれた時代背景などを知ることで、面白さを感じられるようになるケースもある。米光さんにとっては、夏目漱石の代表作となる長編小説『こころ』がまさに、そんな一冊だった。

“先生”は、親友を裏切り自殺に追いやったという罪悪感に苦しみ、やがて自らも死を選ぶ。鎌倉の海岸で“先生”と出会った“私”が、遺書を通じてそのことを知るまでを語っている作品だ。 明治の知識人の内面を描いた傑作として知られるが……。

「はじめて読んだときの感想は『どうして、これが傑作?』でした。冒頭に登場する、若い学生である“私”は、偶然見かけた“先生”と知り合いになりたくて、せっせと海水浴場に通うというシーンから、すでによくわからない。ここだけ聞くと、海パン男子のボーイズラブ!? でしょう。でも、どうもそういう話ではないらしい。後半は先生の遺書が延々続くんですが、原稿用紙300枚近くもある手紙が『四つ折にして畳』まれているなんてありえない(笑)。しかも、ラストも唐突。期待していた謎解きもなければ、伏線もとじていない。はぐらかされたような印象しか残りませんでした」

なぜ、この作品が名作と呼ばれるのか。その謎を解き明かすべく、米光さんは『こころ』について書かれた解説書を読みあさったという。

「すると、石原千秋さんの『こころ-大人になれなかった先生』に、僕が謎だと思ったことがすべて書いてあったんです。“私”が“先生”に声をかけた理由も、この本を読むとわかる。当時の社会状況や時代背景を知っている人であれば、誰でも理解できることでした。でも、今読むと全然わからない。こうした謎を解くのも読書の愉しみではないでしょうか」

  • 文・島影真奈美 text/SHIMAKAGE Manami

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