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精神科医・名越康文が勧める「コミュニケーションの深淵を覗く3冊」

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精神科医・名越康文が勧める「コミュニケーションの深淵を覗く3冊」

中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚(さいこんたん) 怒らないこと イエスマン
臨床の最前線から、メディアの現場まで、さまざまなフィールドで活躍する名越康文さん。クリニックを訪れる患者からタレント、メディア関係者と相手が変われば、そこで求められるコミュニケーションも当然変わる。"ココロ"のプロとして、自在なコミュニケーションを繰り広げてきた名越さんが選ぶ、「コミュニケーションの深淵を覗く3冊」はこれだ。

約400年前に書かれた中国の処世訓「菜根譚(さいこんたん)」から、エッセンスを抜き出し、現代語に訳した『中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚(さいこんたん)』。
自らを厳しく律して学ぶことを説く「儒教」、自由にのんびり生きることを説く「道教」、そして"悟りの境地"を教える「仏教」という、中国をはじめ東洋全体に影響を与えた三大思想に基づき、人生にとって重要な原則を呈示する。

「数ある人生訓の中でも非常に多くの人に愛読され、読み継がれている古典です。コミュニケーションと直接関係ないように見えて、じつは人と自分とを知る最良の教科書になりうる本だと言えるでしょう。『忙しいときは冷静になり、暇なときは情熱を持つ』、『俗世間を生きる中に真理を発見する』といった一節一節を読むごとに、自分との対話が深まる一冊でもあります」

『怒らないこと』。スリランカ初期仏教長老による、法話集。この本によれば<ものをつくり上げる創造の源泉は愛情であって、創造したものを破壊していくのは怒りの感情>だという。"怒り"に焦点をあて、幸せな人生を送るための知恵を、日常の身近な例を挙げながらひもといていく。

「この本を読むと、どのようなコミュニケーションも"怒り"が根底にあると成立しないことが明確にわかります。仏教という偉大な人間哲学の一端を知ることは、コミュニケーションを目先の損得勘定に陥らせない良薬になる。"怒り"の本質を知ることは、深みのあるコミュニケーションにもつながるんです。この本に登場するアドバイスはどれも実践的でわかりやすい。これまで仏教にまったく関心がなかったという人にもおすすめできる一冊です」

『イエスマン』。今年3月に公開され、大ヒットとなったジム・キャリー主演映画「イエスマン~"YES"は人生のパスワード」の原作本。BBCのラジオ・ディレクターである著者は、あることをきっかけに、すべてに「イエス!」と答えることを決意する。飲み会の誘いから億劫な仕事、怪しげなスパムメールの広告に至るまで、すべてを受け入れた彼を待っていたものは――。

「フィクションではなく、著者が実際に体験した実話というところに興味をそそられます。この本を読むと、人に対してYES!の態度で接することで人生がどんどん変わっていく"奇跡"を追体験できる。『君が何かイエスと言ったからこそ起こったものもあるんじゃないかな。イエスと言わなきゃ何も変わらなかったかもしれない』という著者の言葉が心に沁みる一冊です」
文・島影真奈美 text/SHIMAKAGE Manami
写真・嘉川ニ奈 Photo/KAGAWA Nina

今週のEDGEな3冊

中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚(さいこんたん)
『中国古典の知恵に学ぶ
菜根譚(さいこんたん)』
著・洪自誠 ディスカヴァー・トゥエンティワン/1785円
怒らないこと
『怒らないこと』
著・アルボムッレ・スマナサーラ サンガ新書/735円
イエスマン
『イエスマン』
著・ダニー・ウォレス バジリコ/2100円

“理解”がストレスを軽減する

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"理解"がストレスを軽減する

名越康文
名越 康文 Yasufumi Nakoshi
精神科医。1960年生まれ。
京都精華大学人文学部特任教授就任。
専門は思春期精神医学、精神療法。臨床に携わる傍ら、精神科医というフィールドを超え、テレビ・ラジオ・雑誌などでさまざまなメディアで活躍。
また、精神科医から見た、映画・音楽・マンガ評論でも定評がある。近著に『オジさんって言うな!』(主婦と生活社)、『薄氷の踏み方』(共著・PHP研究所)、『女はギャップ!』(扶桑社文庫)など。
どのような相手が来ても、忍耐強く耳を傾ける。精神科医にはそんなイメージがある。話を聞くことが苦になる人には務まらない職業であることは、想像に難くない。だが、意外なことに、名越さんは「若い頃は、自分と違う価値観の人の話を聞くことに、まったく興味が持てなかった」と笑う。

「『この人は、こういう考え方をするんだ。なるほど』と思えるようになったのは30代半ばになってからです。人にはタイプがあり、そのタイプによって物事の感じ方や世界観はまったく違うとわかったことが大きかったですね。例えば、旅行の目的一つとってみても、人によってまったく違うことに驚かされます。『何を見るか』を重視する人もいれば、『何を食べるか』が大切という人もいる。また、『どれだけたくさんの場所を効率的に回るか』が主軸になっているという人もいる。こうした志向性の違いが認識できるようになると、価値観が違う相手の話を聞くこともかなり苦にならなくなるんです」

志向性の違いを認識する。それは相手に対する理解につながるという。

「ペットの例がわかりやすいかもしれません。犬や猫は飼い主が思いもよらない行動をとりますよね。時にはカンベンしてほしいと思うようなこともやらかしてくれる。『なんで、こんなことを……』と思っているうちはストレスがたまるけれど、『そうか、知らない人がいるから緊張しているんだな』と理解できるようになれば、イライラしなくなる。これは人間関係も同様で、相手のキャラクターに対する理解が深まると、対人関係のストレスは自然と減ってくるものです」
文・島影真奈美 text/SHIMAKAGE Manami

好き嫌いを超えた、友人選び

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好き嫌いを超えた、友人選び

名越康文
名越 康文 Yasufumi Nakoshi
精神科医。1960年生まれ。
京都精華大学人文学部特任教授就任。
専門は思春期精神医学、精神療法。臨床に携わる傍ら、精神科医というフィールドを超え、テレビ・ラジオ・雑誌などでさまざまなメディアで活躍。
また、精神科医から見た、映画・音楽・マンガ評論でも定評がある。近著に『オジさんって言うな!』(主婦と生活社)、『薄氷の踏み方』(共著・PHP研究所)、『女はギャップ!』(扶桑社文庫)など。
名越さん曰く「"受け"の技術を磨くことは、すなわち直観を鍛えることでもある」直感を鍛えることは、どんな力につながるのか。

「相手を理解するまでのスピードが短縮できるのはもちろん、自分にとって何が必要で、何が不要なのかを見極められるようになります。日常生活の中にある、些細な選択を意識的に選んでいると、自然と直観は磨かれていきます。とくに、『嫌いなのに気になる』、逆に『すごく好きだけれど、なぜか違和感がある』といった感覚は大切にしたいですね。一見相反するような感情の動きや、すっきりしない感覚に対峙することは、"とっさに判断できる自分"を構築することにつながるんです」

対人関係においても、漠然と相手の印象を眺めるのではなく、自分の感情がどう揺さぶられるのかを意識する。こうした経験の積み重ねが、豊かなコミュニケーションをもたらすという。

「友人選びも大切です。例えば、誰かに意見を聞きたいというときにもっとも重要なのは、アドバイスを求めるのにふさわしい相手を選ぶという過程。情報が集まりすぎて混乱してしまうリスクを避けるためにも、直観が役に立つ。ただ、気をつけたいのは、直観と好き・嫌いは似て非なるものだということですね」

好き嫌いではない、友人選びとはどのようなものなのだろうか。

「尊敬できる相手とつきあうということです。『畏れ』と言い換えてもいいでしょう。どこか底知れないものを感じさせる相手とのつきあいは緊張感を伴うものかもしれません。でも、じつはその緊張感こそが直観を磨き、対人関係力を高めてくれるんです」
文・島影真奈美 text/SHIMAKAGE Manami

“受け”の技術と、その真髄

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"受け"の技術と、その真髄

名越 康文
名越 康文 Yasufumi Nakoshi
精神科医。1960年生まれ。
京都精華大学人文学部特任教授就任。
専門は思春期精神医学、精神療法。臨床に携わる傍ら、精神科医というフィールドを超え、テレビ・ラジオ・雑誌などでさまざまなメディアで活躍。
また、精神科医から見た、映画・音楽・マンガ評論でも定評がある。近著に『オジさんって言うな!』(主婦と生活社)、『薄氷の踏み方』(共著・PHP研究所)、『女はギャップ!』(扶桑社文庫)など。
 大人にふさわしい、深みのあるコミュニケーション。それは、相手とリラックスして向き合い「相手が何を言いたいのか」「何を求めているのか」を全身でじっくり感じ取り、理解するところから始まるという。

「ある程度能力がある人ほど、他人の話を聞くよりも、自分の能力を磨くことに夢中になりがちなんです。ただ、そうすると、ある状況下ではうまくいくけれど、状況が変わると適応できなかったり、成果の割に周囲の評判が思わしくないといった状況に陥りやすくなる。大切なのは、相手が何を言いたいのか、何を求めているのかを認識することです。ここさえ、クリアできれば、仮に自分の意見をまとめるのが苦手であったとしても、最終的には相手を満足させ、自分にとっても納得がいく"落としどころ"を導き出すことができます」

相手の意図をくみ取り、認識する力はトレーニング次第で、誰にでも身につけられるものだと、名越さんは語る。

「会議の時は、他の人の意見に耳を傾け、相手が最も言いたいことは何か、この議論は今どこへ向かおうとしているのかといった"流れ"をつかむことを心がける。論旨や要点がわかれば、自分の考えも一歩先に進めることができるし、深みのある意見を言えるようにもなります。また、飲み会では話しやすい雰囲気を作ったり、相手の話をどう展開させると場が盛り上がるかといったことをほんの少し意識してみるといい。

自分自身を押し殺すのではなく、相手に配慮しながら、自分も愉しむ。すると、コミュニケーションに自然と深みが増してくるんです」
文・島影真奈美 text/SHIMAKAGE Manami

身体感覚が広げる、男の“器”

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身体感覚が広げる、男の"器"

名越 康文
名越 康文 Yasufumi Nakoshi
精神科医。1960年生まれ。
京都精華大学人文学部特任教授就任。
専門は思春期精神医学、精神療法。臨床に携わる傍ら、精神科医というフィールドを超え、テレビ・ラジオ・雑誌などでさまざまなメディアで活躍。
また、精神科医から見た、映画・音楽・マンガ評論でも定評がある。近著に『オジさんって言うな!』(主婦と生活社)、『薄氷の踏み方』(共著・PHP研究所)、『女はギャップ!』(扶桑社文庫)など。
関西弁まじりのソフトな口調で、ズバリと核心をつくアドバイスが人気の精神科医、名越康文さん。臨床を行う傍ら、テレビ出演やラジオパーソナリティ、マンガ・映画評論、文筆業を手がけるなど、精神科医という"枠"を飛び越え、多方面で活躍する名越さんが考える大人のコミュニケーションとは――。

「コミュニケーションの場面で重要なのは、うまく話すことではなく、相手の考えや気持ちをどう受け止めるか、なんです。相手の話に耳を傾けることはもちろん、声の調子やリズム、テンションなどから相手が何を求めているのかを感じ取り、理解することが大切。ある程度の年齢になれば、仕事の場面でもチームの主軸を担うことになる。そこで求められるのは、メンバーの意見をよく聞き、活かせるところは活かしながら、頃合いよく話をまとめる能力です」

年齢とともに、コミュニケーションのスタイルは変化していく。とりわけ、その変化が顕著に表れるのが、表情や視線、身ぶりといった"言葉以外"のコミュニケーション――非言語コミュニケーションの分野だという。

「場数を踏み、経験を積み重ねると、言語化されないメッセージを感じ取る身体感覚が開かれてくる。ちょっとした表情やしぐさ、場の雰囲気といったものを敏感に察知することができるようになると、コミュニケーションの幅も広がる。相手や状況に応じて、臨機応変なコミュニケーションがとれるようになってくるんです」

コミュニケーションの幅の広さは、人としての"器"にもつながる。

「30代後半ともなれば、他人を受容する力も求められるようになります。説明が上手だったり、面白おかしく話をするのが得意でも、一方的に話をするだけではコミュニケーションが浅薄になる。相手が発する有形無形のメッセージを受け止められるようになってはじめて、大人の男性にふさわしい深みのあるコミュニケーションができるようになるのだと思います」
文・島影真奈美 text/SHIMAKAGE Manami

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