EDGE Book Sensor~「うまい」を知る3冊
旬の旨さを知る。これぞ、大人の醍醐味だ!
日常の忙しさにかまけていると、つい食がおろそかになることもある。だが、旨いものに出合うことは、大人ならではの愉しみ。“旬の味覚”がちまたにあふれるこの時季だからこそ、改めて自分と食との関係を振り返りたい。そこで今回は「うまい」とは何かを新たにする、そんな3冊を紹介したい。自宅で旬の素材を美味しく食べる。その方法を教えてくれるのが『土井家のおいしいもん』。料理家・土井善晴初の書き下ろし料理エッセイとなる本書には「蛤の蒸し物」、「なすの揚げ浸し」、「いかと豚肉」といった四季折々の家庭料理のレシピが紹介されている。
例えば、さんま。魚焼きグリルで焼くなら、「最初は焼き上がったときに表になるほうを下に向けて焼き、ひっくり返して表を上に向けて焼くようにすればよい」と著者は言う。その理由はこうだ。「そうすることで表面の水分や脂が下に落ちて、上になるほうは見た目にもきれいにカリッと焼き上がるわけです」。
素材が「おいしいもん」になるには理由がある。本書は、その過程や仕組みを料理初心者にもわかりやすく解説してくれる。旬の味を存分に味わいたい。でも、料理は苦手だし……と尻込みしている人にこそおすすめしたい一冊だ。
『食べる落語』。二八そばから利休饅頭、猪の肉、酢豆腐と、落語にはさまざまな「うまいもん」が登場する。これらをいろは順に並べ、落語のあらすじと共に紹介。例えば、落語「長屋の花見」に登場するのは当時、庶民には手の届かないご馳走だった卵焼きとかまぼこ。金がない長屋の住民たちは漬け物をそれらに見立てて、花見に興じるのだが――。食べ物を巡るユーモラスなやりとりが落語の魅力を教えてくれる一冊でもある。
『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』。1963年の初版発行以降、ロングセラーとなっている料理エッセイ。「そとがわは、こげ目がつかない程度に焼けていて、中はやわらかくまだ湯気のたっているオムレツ」をはじめとする、さまざまな卵料理やフランスの家庭料理、著者のオリジナル料理などが紹介されている。文字を読んでいるだけなのに、あまりのおいしそうな匂いによだれがあふれてきそうになる。40年以上の時を経た今もなお、色あせないうまさがそこにある。
「うまさ」とは一食何万円も取るようなレストランにだけあるのではない。評論家気取りで目の前の食事を論じるのではなく、そこにある「うまさ」を見つけたい。そう心に刻みつけて、今日も食事を味わいたい。
今週のEDGEな3冊
『土井家のおいしいもん』
著・土井善晴 講談社/1470円
『食べる落語』
著・稲田和浩 教育評論社/1365円



