EDGE Book Sensor~流行の正体が見える3冊
流行の表層ばかりを追いかけてはいられない
めまぐるしく変わる流行。時代の流れに置きざりにされるのも考えものだが、表層ばかりを追いかけるのも、大人としては避けたいところ。やはり、ここは流行の核をなす、本質をしっかりキャッチしておきたい。そこで、今回は流行の正体が見える3冊を紹介したい。キング・オブ“カタカナ職業”――アーティスト。だが、改めてアーティストとはどのような職業を指すのかと問われたら、一言で言い表すのは難しい。「アーティストとは何者なのか?」という疑問にひとつの答えを提示するのが『アーティスト症候群』だ。本書では元彫刻家であり、44歳の時に“アーティスト”であることを自ら放棄したという著者が、シニカルな視点で“アーティスト”の正体をひもとく。
アーティストとクリエイター、アーティストと職人は似て非なるものだと、著者は指摘する。「職人やクリエイターは『応える人』であるが、アーティストはいつも『問う人』として受け手の前に現れるのである」と。そして、その「神秘的なイメージが、職人でもクリエイターでもなく、『アーティストになりたい』と思う人々を惹きつけているのかもしれない」と推察する。
アーティストというポジションは「膨れあがる『非承認欲求』と根拠なき全能感を抱えた若者の、夢の受け皿」であるという本書は「アーティストになりたい」「クリエティブな仕事をしたい」という明確な形にならない“夢”をもつ人に、そこにある厳しい現実を突きつける一冊だ。
『哲学』。互いに”天才”と認め合う島田紳助とダウンタウン・松本人志の2人が、往復書簡スタイルで語る人生哲学。お笑い界の内幕話をのぞき見する面白さと同時に「才能がないにもかかわらず、やろうとするのはワガママというか、その人のエゴだと思う」(松本人志)など、読む者をドキリとさせる直言に出会える一冊でもある。
『マイクロトレンド』。世界有数のマーケッターである著者が紹介する、新たなマーケティングの考え方。「男女比に泣く未婚女性」から「高齢のパパ」、「質素な富裕層」といった、現代社会を動かす41の“小さな潮流”を解説する。「すべての人に共通したトレンドを指す『メガトレンド』という言葉では、もはやこの世界を理解できなくなる」というのが著者の持論。これまでとは違う、世の中の見方を教えてくれるはず。
流行を知りつつ、決して振り回されることはない。その絶妙なバランス感覚は、アンテナ感覚の鋭さと現実の狭間で戦い続ける大人こそが獲得できる境地なのだ。
今週のEDGEな3冊
『アーティスト症候群』
著・大野左紀子 明治書院/1575円
『哲学』
著・島田紳助・松本人志 幻冬舎文庫/520円



