EDGE Book Sensor~芸術を読書する秋の3冊~日常編
ホンモノを知る、ホンモノと暮らす。
見る者の心を豊かにしてくれる芸術。しかし、芸術の魅力を“鑑賞”だけにとどめておくのはもったいない。気に入ったデザインに囲まれ、芸術を日常使いする。そんな大人ならではの愉しみを味わいたい。そこで今回は芸術をライフスタイルの中に取り入れるためのヒントが得られる。そんな3冊を紹介したい。ホンモノとニセモノを瞬時に見極める。どうすれば、そんな眼力を養えるのかを教えてくれるのが『ホンモノの人生』だ。著者は「開運! なんでも鑑定団」(テレビ東京)でおなじみの古美術鑑定家、中島誠之助。本書には著者が1歳で両親と死別し、祖母の妹の家に養子に出され、さらに伯父夫婦の養子になり……と数奇な運命をかいくぐり、当代一の目利きとなるまでの半生が描かれている。
裕福な家の養子になりながら、常に「カネは出せないよ」と言われ続け、養父のもとで修行を始めた後も「人間扱いされていなかったのです」という。だが、著者は言うのだ。
「自分がおかれた境遇を甘受して、常に鍛え抜いていく。そういう意味で私がおかれた境遇は、私の人生を鍛える意味では幸せな境遇だったと思います」と。
気っ風のいい江戸っ子トークで語られる「いつもおでこに風を受け、めんつら張って進め」、「小ガネを一生懸命抱え込んで、少しでも増やそうという、ケチな気持ちを起こすから、悪いヤツにひっかかって全部騙し取られる」といった名言の数々が、背筋をシャキッと伸ばしてくれる一冊でもある。
『堀切玩具堂』。現役プロダクトデザイナーであり、“新世紀の買い物王”の異名をとる著者がモノへの限りない偏愛をつづる。「モノを意識して蒐集しはじめたのは、可愛い幼稚園児の頃。獲物は日本酒の『酒蓋』でした」という著者の現在の“獲物”は「Peace記念タバコ」から「ベアブリック」、「ブリキ玩具」、「豆盆栽」とじつに多種多様。身近なところに、こんなデザインが!? と新鮮な驚きを与えてくれる。
『内木孝一の一生使える器選び』。日常的に使う芸術の代表選手と言えば、和食器。しかし、知っているようで知らないのが和食器の選び方であり、つきあい方だ。本書では製法から流通まで知り尽くした和食器のプロが、和食器の目利きになるポイントをQ&A方式で紹介していく。「器屋さんでは、まず何を尋ねればいい?」「和食器はセットで買うべき?」など、今更さら恥ずかしくて質問できないような、初歩中の初歩の疑問に答えてくれる貴重な一冊だ。
非日常として芸術を愉しむだけではなく、芸術を普段使いする。それは、無意識のうちにホンモノの良さをインプットすることにもつながる。目に触れ、手でさわり、五感で芸術を感じる日々の積み重ねは、ホンモノを見抜く芸術的センスをも養ってくれるはずだ。
今週のEDGEな3冊
『ホンモノの人生』
著・中島誠之助 講談社/1680円
『堀切玩具堂』
著・堀切玩具堂 新宿書房/2940円



