EDGE Book Sensor(Tue)~仕事の面白さを再発見できる3冊
職場という名のエンタテイメントを存分に愉しむ
仕事にやりがいを感じながらも、ふと「このままでいいのか」という思いが胸をよぎる。ビジネスマンともなると、一度ぐらいはそんな経験があるもの。仕事となると生活のためだけに働くのもつまらないが、割り切るという技術も必要。そこで、今回は仕事の面白さを再発見できる、そんな3冊を紹介したい。つまらない職場での日常もハタから見るとドラマの宝庫になる。そう教えてくれるのは小説『あぽやん』だ。作中に描かれているのは、閑職とされる空港勤務を命じられたツアー会社の若手社員の日々。発券ミス、予約重複、パスポート紛失といったトラブルを解決するのが主人公の仕事で空港の華やかなイメージとは程遠い。
再入国許可のない日系ブラジル人の援交少女、絶対に出発しようとしない謎の老婦人、失踪した元社員が予約記録に仕掛けていった嫌がらせなど、次々に起こる事件。しかも、上司や職場の先輩、職場の女性たちは曲者揃いで一筋縄ではいかない。「僕にとっての空港とは何か」を自問自答する日々……。
だが、そこに明快な答えはない。あるわけがないのだ。「日々働きながら問い続けていれば、いつか見つかる、と信じたい」というように、答えは日々の仕事のなかで見出していくものなのだ。空港のカウンター内でのドタバタぶりは意外なリアル感で描かれていて、出張が楽しみになりそうな一冊でもある。
『僕はこうやって11回転職に成功した』。サラリーマン生活20年にして11回の転職を重ねてきた著者が、その経緯を事細かに語る。日本企業や外資企業、倒産企業までも経験し、転職のスタイルも新聞公募からグループ単位での企画持ち込み、ヘッドハンティングと幅広い。転職先もすべて実名で登場する。著者の体験から見えてくる社風や社員のキャラの違いはじつにさまざま。自宅にいながら転職気分も味わえる。
『借金取りの王子』。リストラ請負人を主人公とする連作小説。自らもリストラされた経験を持つ主人公は企業に乗りこみ、リストラ対象者を面接し、自主退職を促すのが仕事。辞めさせる側と辞めさせる側、それぞれの思いを丹念に拾い上げた本作品はフィクションとは思えないほどのリアルさに満ちている。エンタテイメント小説として愉しめるのはもちろん、仕事観を整理するヒントもつまっている一冊だ。
仕事に役立つ情報はビジネス書のなかにだけあるとは限らない。小説の中のたった一節が視界を広げてくれることもある。気分を上昇させてくれる自分だけの数冊の本があれば、落ち込みもスランプも怖くなくなるのだ。
今週のEDGEな3冊
『あぽやん』
著・新野剛志 文藝春秋/1890円
『僕はこうやって11回転職に成功した』
著・山崎元 文藝春秋/1500円



