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AC/DC

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AC/DC

ソニー
SICP-2055
10月22日発売 2520円

『悪魔の氷/ブラック・アイス』

絶えず変化を重ねていくことを美徳とする人もいれば、揺るぎなく不変であることにこそ価値があると言う人もいる。どちらも間違っていないと思う。が、とにかく変化し続ければそれでいいというわけじゃないし、「変わらないにもほどがある」と言いたくなる場合もある。さらに言ってしまうと、人には確信を持てていないときにこそ、変化に逃げがちなところがある。逆に、実際には進化や深化を遂げているにもかかわらず「変わってないねえ」などと軽率に口走られたりすると本気でムカつくのが人間というものだと思う。

AC/DCの新作が登場した。『悪魔の氷/ブラック・アイス』と銘打たれたこの作品は、『スティッフ・アッパー・リップ』以来8年8カ月ぶりのオリジナル・アルバムということになる。

この作品で聴くことができるのは、10人中10人が、いや、100人中100人のロック・ファンが「AC/DC以外のナニモノでもない」と認めるはずの、あの特徴的なサウンドである。驚くほど変わっていない。が、この巨大なマシーンは遠目に見ると昔と同じままだが、細部にわたって観察してみると、実はさまざまな違いをはらんでいる。大雑把な言い方をすれば、AC/DCが相変わらずAC/DCであるためのチューン・アップだとかアップ・グレードみたいなことが実践されているのだ。

プロデューサーは今回が初めてのタッグ結成となるブレンダン・オブライエン。エンジニアとしての活動歴が長い彼は、エアロスミスからレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ブルース・スプリングスティーンに至るまでの数多くの作品に関わってきた、現代ロック・シーンにおける最重要人物のひとり。しかしもちろん、無骨なようでいて完璧な機能美を持ったAC/DCサウンドを分解したり、お洒落に装飾したりすることが彼の使命ではなかった。いわば、もはや誰もが不変であり続けることを疑わず、変化そのものが望まれていないこのバンドの音を、21世紀なりのクオリティを伴ったものとして更新することこそが、最重要課題だったはずなのだ。

そして実際、重戦車のごときギター・リフも、カミソリのような切れ味のシャウトも、1980年発表の怪物アルバム、『バック・イン・ブラック』の頃から基本的には変わっていないのに、ちっとも古臭さを感じさせない。確かにその『バック・イン・ブラック』にすら古さをまったく感じていない僕のような人間がこんなことを言っても説得力に欠けるかもしれないが、そんな僕自身、このアルバムには安心感よりもむしろ新鮮な刺激を味わっていたりするのだ。巨大アリーナやスタジアムが大合唱で塗り潰されること必至のポップさを持った楽曲もあれば、年輪に裏付けられた色気を感じさせる曲もある。が、どこを切り取ってもAC/DCらしくない側面など出てこないし、何よりも“枯れ”に逃げていないことが素晴らしい。しかも彼らは「生涯現役!」とスローガンを掲げながら鼻息を荒くするのではなく、ごく自然体のまま、ロック・バンドとしての絶倫ぶりを見せつけているのだ。

ちなみに現在、最年長メンバーは61歳。そうした年齢的条件や、オリンピック開催よりも緩慢なアルバム・リリースのサイクルを理由に「これが最後のアルバムになるのでは?」といった声も、聞こえてきている。しかしおそらく、AC/DCは最後まで“逃げ”とは無縁の直球勝負を続けていくに違いない。が、同じように見えるその球も、実はその時代なりの改良を経ているはずなのである。


<プロフィール>
初代ヴォーカリストのボン・スコットは1980年に急逝。後任にブライアン・ジョンソンを迎え、スコットへの追悼の念を込めた『バック・イン・ブラック』で世界を制覇。全世界で4000万枚を超えた



文・増田勇一 text / MASUDA Yuichi