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オアシス

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オアシス

ソニー
SICP-2000
10月1日発売 2520円

『ディグ・アウト・ユア・ソウル』

オアシスが待望の第7作で証明した、“消しても消えない黄金律”の強味
冒険しても損なわれない普遍性と、それを素直に愛するしかないという現実

オアシスの新譜がとてもいい。
正直に言うと、過去にこのバンドを「とてもいい」と思ったことはほぼ皆無で、いつも「悪くない」とか「曲そのものはいいと思う」といった曖昧な結論に逃げていた気がするのだが、なんだか今回のアルバムには素直に屈服できる何かがある気がする。

この3年ぶりの新作は『ディグ・アウト・ユア・ソウル』と題されていて、彼らの通算7作目のオリジナル・アルバムにあたる。で、どうして自分がこれまでの作品以上に今作に惹かれるのかを考えてみたときに辿り着いたのが「完成度も成熟度も高いのに、なんだかイビツだから」という結論。言い換えれば「心地好いのに聴き流せない」ということでもある。
「作りたかったのは“聴く”音楽ではなくて、“体感”できる音楽だった」

ノエル・ギャラガーはこのアルバムの完成に際してこんな発言をしている。彼によれば、いわゆる“AメロからBメロへ、そしてサビへ”というありがちな曲作りのパターンから抜け出し、そうしたお決まりの方法以外の手段で聴き手を楽曲の持つグルーヴやスピード感のなかに引きずり込むことを、今回は重んじたのだという。なるほど。言われてみれば確かにそういうところはあるし、僕がある種のイビツさ、すなわち定型にあてはまらないような感触を抱いたのはそのためなのかもしれない。

が、確かにノエルはこのバンドにおける作曲面での要ではあるけども、全11曲のアルバム収録曲(日本盤のみ収録のボーナス・トラックを除く)のうち彼が書いているのは6曲。あとの5曲のうち3曲は彼の実弟にあたるフロントマンのリアム・ギャラガーが書き、アンディ・ベルとゲム・アーチャーも1曲ずつ提供している。このバランスは前作あたりとも大差ない。そこでふと気付かされたのが、僕が「ん?」と感じさせられたもののほとんどはノエルの曲じゃないということだ。

いや、もちろん彼の作った楽曲が充実していないという意味じゃない。僕が言いたいのは、どんなにメソッドを無視して、アタマではなくカラダで音楽を作ろうとしても、名匠の手腕というのは隠しようがないものだということ。敢えて粗雑なまま完成させたつもりでも、実はしっかりと機能美が伴っていて、無意識のうちに彼なりの黄金律に則ったものになっているということだ。彼の言葉を信じるならば「一瞬で書きあげられ、一発録りで」完成されたという今作からのシングル、『ショック・オブ・ザ・ライトニング』の、“よくできたオアシスのヒット曲”以外のナニモノでもないたたずまいが、それを実証している気がする。

本来、このバンドはノエルの才能を軸としながら、彼にすべてが寄り添っていくことで音楽的に安定することになるのだろうが、むしろ今はその逆とも解釈可能な状態にあるのかもしれない。つまり、理にかなったノエルが、理屈抜きの3人に引っ張られているということだ。同時に、どんなに冒険しても、自覚的に階段を踏み外そうとしてもキチンと歩けてしまうノエルの特異さを知っているからこそ、他の誰にも“オアシスらしい曲”を作ろうとすべき必然がない。そんな今の状態が、この作品には反映されている気がする。

しかし、よくよく考えてみると、僕が今回のアルバムを「とてもいい」と感じた理由は、もっとシンプルなところにあるような気もする。言ってみれば、僕自身がちょっとは素直になりつつあるから。それを認めるのは少しばかり悔しい気もするんだが。



<プロフィール>
リアムとノエルのギャラガー兄弟を中心に、1991年に結成。デビュー以来の全世界でのアルバム・セールスは5000万枚を超える。
メディアに餌を与えるように傍若無人な言動を重ねてきたロック界最強の兄弟は、それ以上に、いくつもの名曲で世界を潤わせてきた

文・増田勇一 text / MASUDA Yuichi