37年間乗り続けています
生きるとは、時代につれて移り変わる風景のなかで、そこにある記憶を自分なりに拾い集めていくことでもある。庶民文化研究家の町田忍さんはこの数十年間、その記憶を“収集”という形で記録してきた。そしてそのスタイルは愛車にも表れている。愛車はフォルクスワーゲンのType1。町田さんは「ビートル」と呼ばれたこの希代の名車を37年間乗り続けている。
「納車は1973年の1月13日だから、ちょうど丸37年乗っていることになりますね。もっとも注文は前年の年末だったから、年式としては1972年式ということになるんですが」
40年近く前の納車日まで覚えているとは驚きだが、町田さんがビートルを購入するまでの手順は、さらに驚くべきものだった。
「いやぁ、実は現物を見ないで買っちゃったんです」
エエッ!?
「当時フォルクスワーゲンを扱っていたヤナセの本社が芝浦にあったんですが、カタログだけ取り寄せて、後は電話注文で納車までこぎつけたんです。実は免許を取得してから、一度も公道を運転したことがないまま、営業マンに家まで車を持ってきてもらい、現在に至る、というわけなんです(笑)」
1973年というと、まだ車を購入するという行為自体がぜいたくだった頃。ましてや輸入車である。なぜ見たこともない車を電話一本で買うに至ったのか、次回からはその過程をひもといていく。






