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乗ってこそフェラーリ!

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フェラーリ・F355ベルリネッタ
ハンドル回りの細かいキズは、自身の手でハンドルを握ってきたからこそ。このキズは、F355ベルリネッタと夏樹さんとの無限に繰り返されたコミュニケーションの証である
夏樹さんと、現在の愛車F355ベルリネッタとは10年以上の付き合いになる。その過程は、車のそこかしこに刻まれている。

「例えば、ステアリングの後ろの部分もそうですよね。ステアリングを操作しながら、ウィンカーやワイパーなどを操作しようとすると、指輪が当たってしまうことがある。そうしてこの部分が削れてしまったんです」

夏樹さんのF355はパッと見たところでは、キズらしいキズはほとんどない。だが、細かく見ると、夏樹さんと過ごした時間の分だけ、痕跡が残されている。

「走るためにこの世に送り出された車という道具にキズがついてしまうのは、仕方のないことですよね。もちろん大きなキズは直しますけど、持ち主が細かいキズに怯えた揚げ句、ガレージに置かれたままの車ってかわいそう。乗って走れば、少しは汚れるしキズだってつきますよね」

だが、それは車が本来負うべき役割をまっとうし、“生命”と向き合ってこそ起きること。まっとうに乗られてきたことを象徴するキズは、車にとってもオーナーにとっても勲章と言える。

「きちんと対峙すれば時に傷つけることもあるけど、だからこそ関係を深くすることができる。人付き合いと同じですよね。もちろん姿形が美しいに越したことはないけれど、車も人も内面からにじむものこそが本質的な魅力になる。そういう車の佇まいを決めるのは乗り手。その責任は大きいんですよ」

車は美しい。だが、その姿形の美しさだけを愛でるということは、車に対する冒涜に他ならない。走るために生まれてきた車を、その本分を忘れてガレージという檻に閉じこめておいていいはずがない。
文・松浦達也 text/MATSUURA Tatsuya
写真・初沢亜利 Photos/HATSUZAWA Ari
撮影協力・TOYO TIRES ターンパイク
夏樹陽子
  • 夏樹陽子

  • 三重県出身。女優。『白い巨塔』、『ザ・ハングマン』から『渡る世間は鬼ばかり』まで数々のテレビドラマや映画、舞台などさまざまなフィールドで好演する。今夏の舞台『TEACHERS~職員室より愛を込めて~』は7月18~20日が東京芸術劇場にて。その後、大阪等全国数カ所で公演予定。

    公式HP

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