最高を目指すため、最高を知る
「昔から、どこかにコンプレックスがあったんですよ。例えば、アメリカのミュージシャンなら生まれたときから、周囲にいい低音があふれていて、そのなかで耳が鍛えられていく。人間にとって『かっこいい』と思える音が自然に脳に焼きつけられているような気がします。それこそアメ車のエンジン音やドアの閉まる音もそうですよね。日本にいながらにして、その感性に追いつくには、とにかくたくさんいい音を聴いて自分を追いまなければならない。音に限らず、他にも『ハーレーのカッコ良さ』みたいなものも、向こうの人たちの体には染みついているような気がするんです」
そんな思いがあるからこそ、恩田さんはコルベットのマフラーひとつとっても、「腰のある重低音サウンドを」と音を中心にチューニングを行った。その甲斐あって、「音量は最小限、でも音質は最高」というマフラーに仕上がった。
「ところが思わぬ落とし穴があったんです。スタジオでレコーディングした音源をさまざまな環境で聴いて音を確認したいから、もちろんコルベットの車内でも確認するんです。ところが、なまじマフラーを自分好みの音にチューニングしてしまったから、音楽の低音部分がエグゾーストノートでかき消されてしまうんです」
高速走行時にオーディオをかけると、乗れば乗るほど「ステレオ全開」状態になってしまう。ステレオはかなりの爆音にしないと、音のバランスが確認できないというのだ。
「ただ、(自宅のある)このあたりは、閑静な住宅街。だから、家の前の通りに入る角で音楽のボリュームをグッと絞るんですよ」
好きなものと対峙していても、気遣いを忘れない。それが大人の愉しみのたしなみである。



