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そのミニに隠されていた物語

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2004年のオークションから3年以上が経過しているというのに、まだ走行距離は900km。そのほとんどは高松さんのドライブによるものだ。
高松さんが「最近、セカンドカーとしてよく乗っている」のは、この衝撃的なペイントのミニ。実はこのミニ、友人でもあるアートディレクターの野田凪さんから譲り受けたものなのだという。

「このミニは、2004年に行われた森美術館のオープン1周年チャリティ・オークションに出品されて野田さんが落札したもの。ところが彼女、実は免許を持っていなかった。忙しくて免許とれないまま3年が経過してしまい、車検の時期になってしまったというんです。僕のところにこのミニが来たとき、走行距離はまだ100kmにも届いていませんでした(笑)」

2004年のオークションで野田凪さんが落札したのは、アーティストの中村哲也さんがデザインした黄色と黒の“スパイダーハニカム”パターンがペイントされたミニ。六角形を意味する“ハニカム”の連続パターンからは、見方によって異なる模様が浮かび上がってくる。

「ある距離で見ると『蜘蛛』。近づいて見ると『唇+ハート』という非常に面白いデザインですよね。ただ、譲ってもらうことになった大きな理由は、デザインもさることながら野田さんが『譲るなら、よく知る誰かに譲りたい』と僕を候補に挙げてくれたこと。そしてそもそものチャリティ・オークションの性格によるところもありました。」

2004年に行われたそのオークションの売り上げはJAHDS(人道目的の地雷除去支援の会)などに寄付された。9・11テロの後、「宇宙から地球を見たとき、国境線はない」というテーマで日清カップヌードルのCM、『NO BORDER』キャンペーンを提案した高松さんにとって、このミニは「クリエイターによるデザイン・ミニ」という以上の価値があった。

「『NO BORDER』キャンペーン当時の取材で、国境線――“BORDER”近くには、まだまだ数多くの地雷が埋められていることを実感したんです。現地に行くと地雷で手足を失った人がいる。それを目の当たりにして『境界線なんかいらない』という『NO BORDER』への思いは強くなりました。野田さんからお話をいただいたとき、間接的にでもチャリティに参加するような、関われるような気がして譲り受けることにしたんです」

高松さんは、運命の糸に導かれるようにして、このミニと出会ったのだ。
文・松浦達也 text/MATSUURA Tatsuya
写真・北野謙 Photos/KITANO Ken
高松聡 アストンマーティン DB9
  • profile
  • 高松聡 アストンマーティン DB9
  • 1963年生まれ。大手広告代理店で営業職を10年以上つとめた後、クリエイティブ分野へ転身。2005年にクリエイティブエージェンシー・ground、並びに宇宙映像制作会社SPACE FILMSを設立。ポカリスエットの“宇宙CM”や、日清カップヌードル「NO BORDER」、「FREEDOM」キャンペーンなどを手がける。

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