そのミニに隠されていた物語
「このミニは、2004年に行われた森美術館のオープン1周年チャリティ・オークションに出品されて野田さんが落札したもの。ところが彼女、実は免許を持っていなかった。忙しくて免許とれないまま3年が経過してしまい、車検の時期になってしまったというんです。僕のところにこのミニが来たとき、走行距離はまだ100kmにも届いていませんでした(笑)」
2004年のオークションで野田凪さんが落札したのは、アーティストの中村哲也さんがデザインした黄色と黒の“スパイダーハニカム”パターンがペイントされたミニ。六角形を意味する“ハニカム”の連続パターンからは、見方によって異なる模様が浮かび上がってくる。
「ある距離で見ると『蜘蛛』。近づいて見ると『唇+ハート』という非常に面白いデザインですよね。ただ、譲ってもらうことになった大きな理由は、デザインもさることながら野田さんが『譲るなら、よく知る誰かに譲りたい』と僕を候補に挙げてくれたこと。そしてそもそものチャリティ・オークションの性格によるところもありました。」
2004年に行われたそのオークションの売り上げはJAHDS(人道目的の地雷除去支援の会)などに寄付された。9・11テロの後、「宇宙から地球を見たとき、国境線はない」というテーマで日清カップヌードルのCM、『NO BORDER』キャンペーンを提案した高松さんにとって、このミニは「クリエイターによるデザイン・ミニ」という以上の価値があった。
「『NO BORDER』キャンペーン当時の取材で、国境線――“BORDER”近くには、まだまだ数多くの地雷が埋められていることを実感したんです。現地に行くと地雷で手足を失った人がいる。それを目の当たりにして『境界線なんかいらない』という『NO BORDER』への思いは強くなりました。野田さんからお話をいただいたとき、間接的にでもチャリティに参加するような、関われるような気がして譲り受けることにしたんです」
高松さんは、運命の糸に導かれるようにして、このミニと出会ったのだ。
写真・北野謙 Photos/KITANO Ken




