「最近、クルマの乗り方のバリエーションは絞られてきたかな。ここに紹介した2台以外にもセンチュリー、そしてジェットにヘリコプター……。場面に合わせて、移動手段を選べるようになったことも大きい。長野に蕎麦をヘリコプターで食べに行ったりもするし、プライベートジェットのおかげで行動半径はさらに広がった。ただ、ジェットは維持費がクルマとはケタ違いなんだけど……(苦笑)。でもね。ベントレーもメルセデスもヘリもジェットも、ただ無駄遣いしているわけじゃない。最初は、必要な時間を手に入れるためだった。そして世間で何が起きているか、次に何が来るかをいろいろな場所から、様々な角度から見て、ビジネスにつなげるためでもあった。そうしてビジネスを展開していって、昔からの夢だったクルマやヘリ、ジェット、ホテルは手に入れた。そこで再確認したのは、やはり今後はモノよりも人を大切に生きていきたいということ。ただ、ここまで莫大な費用をかけたからこそ、本当にそう思うことができるという面もある。中途半端に散財して、中途半端に人に寄りかかってたら、自分が生きていくために必要な本道、本質に気づくことはできない。徹底したからこそ、気づくことができた。そんな気がするんだよね」
とはいえ、貞方社長がクルマに興味を失ったわけではない。スーパーカーに憧れ、レースにまで参戦した男が、そう簡単にクルマから降りるわけがないのだ。
「実は昨年秋の東京モーターショーで、GT-Rを注文しちゃったんだよね(笑)。日産の技術者が自社のクルマを『日本メーカー至上最高のデキ』って本気で大絶賛してるのを聞いて、『これは、乗っておかなくちゃ』って。ちなみに、そのモーターショーでは、フェラーリ430スクーデリアも注文済み(笑)。とはいえ、若い頃のように『カウンタックのオーナーになりたい!』という憧れという感覚ではない。『モノがいい』、『刺激を受けられる』と確信したから注文した。自分に刺激を与えてくれるのであれば、モノでも人でも、いつでも大歓迎するよ」
貞方邦介は、これからも走り続けていく。
文・松浦達也 text/MATSUURA Tatsuya
写真・佐々木朋広 Photos/SASAKI Tomohiro