インテリアは譲れない
「クルマは部屋みたいな側面もある。だから、乗っていて気持ちよくないクルマには乗りたくない。このベントレーの内装は、徹底して赤で統一した。もともと赤は好きな色なんだけど、とりわけこの赤――ホットシュプールが気に入ったんだ。縫い目のステッチを白にしようか一瞬迷ったけど、少し主張しすぎかと思って自重したんだよ」
だが、貞方社長が一か所だけ、好きな赤色にできなかった場所がある。
「シートで採用されたこの明るいホットシュプールという赤で内装を統一しようと思ったんだ。ボディの白ともよく映えるしね。ところが、ベントレーの規定でこの色はダッシュボード周りには使えない。外光がフロントガラスに反射して、危険だというんだ。仕方なく、ファイヤーグローというほんの少しだけ落ち着いた色をセレクトした。もうイメージが頭の中に浮かんでいたから、内装の赤はゆずれなかった。ダッシュボードは悔しいけど、ファイヤーグローもいい色だから割り切れた。ただその代わりに、他は徹底的に赤を配色することにしたんだ」
ステアリングはもちろん、シフトレバーや床のマット、そしてインテリアを指定する際、つい忘れてしまいがちなシートベルトもきっちり赤で統一した。パネル類は、落ち着きを演出できる木目でありながら、躍動感のあるオリーブアッシュに。
「仮にも、インテリアのコンサルタントもやっている。自分で乗ったときの気持ちよさもそうだし、こうしたクルマに乗っていると否が応でも注目されるから、誰に見られても恥ずかしくないような仕上がりにしておかないといけない」
プライベートでステアリングを握るクルマであろうと、ビジネスへの影響を意識する。こうした細やかな意識の配り方も、経営者の資質のひとつなのだ。




