仕事とクルマの不思議な共通点
「大切なのは乗ってみて『いいな』と思えるかどうか。実はDB9に乗り換えると決める前には、『多分、選ばないだろうなぁ』と思いながらも、メルセデス・ベンツのSクラスやBMWの7シリーズも試乗してみました。実際、乗ってみると最高にラクでいいんです。でも、どことなく落ち着かない。なんだか“上がり”のポジションになってしまったような、つまらなさを感じてしまったんです」
突き抜けたアイディアを具現化するのに必要なのは発想の幅を広げること。振り切れた“結果”を求めるならば、すべてを精査するのは仕事でもクルマ選びも同じ。だからこそ、高松さんはDB9の対抗馬でもあったランボルギーニ・ガヤルドやフェラーリにも乗ってみた。
「僕は試乗する前にも、それぞれのクルマに対するイメージは持っていますし、実際に乗ってみるとそのイメージに近いことがほとんどです。ただ、自分の知らなかった満足感があるかもしれないと考えると、試乗せずにはいられない」
そうしたクルマ選びのスタンスは高松さんの仕事ぶりにも現れている。高松さんは広告やキャンペーンを手がける際、「クライアントに本当に必要なものは何か」を基礎の基礎から考察し、必要な要素を徹底的に調べ上げる。過去にあった既存の手法に限らず、すべての可能性を模索する。
「例えば、サッカー・ワールドカップでのパブリック・ビューイングで言えば、もともとは広告予算0円で、「スカパー!で見るW杯日本戦」をPRするという無茶なミッションだったんです(笑)。とはいえ、やはり予算がなければイベントを成立させるのは難しい。ならば、国立競技場で熱狂するという体験――エネルギーとコミュニケーションを味わう対価としてサポーターに少しずつ予算を負担してもらおうと発想を転換させたんです」
最後の一押しは、そこにあるエネルギー。DB9を選ぶ際も、アストンマーティン特有の躍動感が最後に背中を押したという。とりわけ、高松さんが惹かれたのはそのエンジン音だった。
「イグニッションのボタンを押してエンジンをかけると、DB9は『グォン!』って一瞬フケ上がるんです。その音にヤラれちゃいました。しかも、低回転域では音もサスペンションもジェントルなのに、3500~4000回転を超えるといきなり『クォオン』という音で乗り手にアピールし始める。その折り合いのつけかたが、僕の好みにハマっていたんです」
プロセスにとことん真剣になるからこそ、手に入れた“結果”が満足できるものとなる。それは仕事でもクルマ選びでも同じである。
写真・北野謙 Photos/KITANO Ken



